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◯◯VS×× ~「君よ憤怒の河を渉れ」と馬~

前書いたとおり政治の話はしません、以上。




映画の評価なんて玉虫色で、本国では全く評価されてなかった監督や作品が
余所の国に持ちだされた途端、そこの国の人にウケてしまったなんてことは多々ある。

ジュリアン・デュヴィヴィエさんという監督さんが居て
作品に通底する浪花節が日本人と相性が良かったのか、我が国では随分と評判が高かったのですが

我が国ではペペルモコさんの名が「色男」の代名詞として用いられてた。

ウィキペディアにも書かれてるように、映画研究家のジョルジュ・サドゥールさんに
「東洋の一小国だけにおいて、熱烈な観客がいる」と言われたくらいで
更に、全盛期を過ぎた後も、ヌーヴェルヴァーグの連中にボロクソに叩かれた
―このへんは薄っすらと記憶にある―くらい酷い扱いを受けてて
現在では復権してますが、まあ当時のフランスでは評価は高くなかったようです。

今の日本で例えるなら
町◯さんとか宇多◯さんとかにボロクソに叩かれてるテレビ出身の映画監督が
ポリネシアで絶賛されたみたいなもんで...本当に映画の評価とは難しいものだなと思いますね。


ということで何故か、中国でのみ大ヒットした映画「君よ憤怒の河を渉れ」である。


監督は「北京原人」の佐藤純彌さんです...

「シベ超」「幻の湖」と並び“ネタとして神棚に上げられすぎて”「うぱー」を言う気にもなれない。


無論、「北京原人」だけが有名ってわけではなく「人間の証明」


等の「THE・大作映画」を数多く手がけておられる方で「新幹線大爆破」は
ヨーロッパで評価が高いみたいです。

お子さんもドラマのディレクターさんで、演出を担当されてる作品が
『金田一少年の事件簿』『サイコメトラーEIJI』『ごくせん』『すいか』『家政婦のミタ』とスゴイ。
親子二代渡って職人って感じがする。



ま、それはともかく「君よ憤怒の河を渉れ」である。

いろいろな政治的事情から海外映画を輸入できなかった中国が「解禁」した時期に
公開された日本映画で、中国でのタイトルは「追捕」

娯楽に飢えていた当時の若者に熱狂的に受け入れられ、主演の高倉健さんのファッション(グラサン)や
原田芳雄さんの“モミアゲ”を真似する若者が急増。

gurasan.jpg

momiage.jpg


“中国人の約80%が『君よ憤怒の河を渉れ』を観た!!(1999年調べ)”
と、まあ日本における「タイタニック」みたいなヒットの仕方をしたらしい。



今、日本の大学に来て映画研究をしている中国の方の大体が「追捕世代」である。




しかし、この映画。お話のほうはというとちょっと訳がわからない。


どれくらい訳がわからないかというと、日本で大ヒットした「サスペリア」と同じくらい訳がわからない。



――――――――――――――閑話スタート――――――――――――――――――

・・・いや話逸れちゃうけど「サスペリア」は「タイタニック」以上のムーヴメントだったんだって。
以下「マジソンズ博覧会」さんからの引用


>「決して、ひとりでは見ないでください」
>このコピーをCMスポットでしゃべっていた人が父の高校時代の同級生というだけで
>何か得した気分になったもんだ。『サスペリア』はそれほどに日本国中にセンセーションを巻き起こした。
>信じられないことだが、今で云えば『タイタニック』に比肩するほどの大流行だった。

             (中略)
>物語は、改めて観ると支離滅裂で、何が云いたいのかさっぱり判らないが、まあいいってことよ。
>イタリアが生んだ鬼畜監督、ダリオ・アルジェントの奇想の美学を楽しむべし。
>デヴィッド・リンチと同じで、この人の映画は論理的に受け止めてはダメなのだと思う。

http://www5b.biglobe.ne.jp/~madison/worst/occult/suspiria.html
※リンク先微グロ注意

―――――――――――――――――閑話終了―――――――――――――――



まあ佐藤純彌さんが、ダリオ・アルジェントさんくらい訳が分からないというほどでもないが
あらすじを解説する気が失せてしまうような変な展開、ケッタイな映画であることは確かです。

・・・適当にググるなり実際に映画を見るなりしてください...


音楽もケッタイであった。

テーマソングは、クエンティン・タランティーノさんあたりが自作のOPに再利用しそうな感じがして
中々ダサかっこよくてイイ。




だがしかし、健さんが北の大地に降り立ってからは
nonki.jpg
サスペンス映画に似つかわしくない、えらくノンキな音楽になる。


恐らく「第三の男」のチター「太陽がいっぱい」の市場のシーンを意識してるのだろうけど
(「君よ憤怒の河を渉れ」も「太陽がいっぱい」も“観光映画”としての側面があったと思う。)

実際はゲームボーイ、スーパーファミコン時代の任天堂が“南の島っぽいステージ”で使いそうなマヌケな音楽
で「これは・・・どういう感じで見てあげたらいいのか・・・」と啞然としてしまう。

・・・あの~、よく海外映画の日本語吹き替え版のEDが
日本人歌手の変な音楽に差し替わることがあるでしょ?
あのたぐいの音楽を聞くような、そういう鑑賞態度で臨めばよいかと...


ヒロインの中野良子さんはいかにも“北の女”という感じがして「アラ、いいですね」なのだが
kitakita.jpg
ここは割愛。


さて、政治の話はしない、と言ったが、どうも解説上避けられないみたいで・・・
なるたけ伏せます、ハイ。

・・・・さっくり先の展開をネタバレしちゃうと、西村晃さん扮する政界のフィクサーが
◯◯◯◯◯を人間ロボットにする巨大な陰謀があって
その陰謀に健さんが巻き込まれたということで
「ははあ、だから◯◯◯◯国家だった中国でウケたのか。」と勘違いしそうだが
実際は違う。


以下は先程「追捕世代」の書として例に出した「中国10億人の日本映画熱愛史」からの引用。

>『都市のモダニティー体験の反復』
>しかしながら、スター俳優を軸に大量生産されたサスペンス映画の一つに過ぎない日本の娯楽作品が
>いったいなぜ中国においてかくも熱狂的に受容されたのであろうか。
>おそらく、その第一の要因は、この映画で描き出される資本主義社会の物質的豊かさにあったといえるだろう。

いきなりド直球で◯◯◯◯と真逆の言葉が出てくる。
取り敢えず引用を続けてみよう。


>毛沢東による中国革命の戦略の反映として、農村が、革命の担い手として称揚される一方
>物質文明が進んだ都市は、革命の文脈においてむしろ立ち後れている存在と見なされた。
>新中国建国以後、都市を描いた映画がごく僅かしか製作されなくなったのは、その端的な表れである。

>さらに都市は、堕落した西欧のデカダンス文化の産物としても否定されるべきものであり
>モダニズム的な諸要素がしばしば諷刺の対象とされた。
>例えば、ブルジョア的な登場人物を下から照明を当ててわざと不気味に映し出したり
>ジャズやネオンをパロディー的に用いることで都市生活の軽薄さを批判することが
>中国映画において頻繁におこなわれていたのである。

>このように、従来の中国社会の価値観においてブルジョア腐敗文化としてネガティブに捉えられていた都市が
>『君よ憤怒の河を渉れ』において、初めてポジティブなものとして登場したことによって
>中国の観客が受けるカルチャーショックは計り知れないものとなったのである。


君よ憤怒の河を渉れ」を中国の人は、どっちかっていうと資本主義バンザイ映画
―「◯◯◯◯を弾圧する悪の資本主義糾弾映画」というよりは
「悪の資本主義糾弾映画とみせかけて、実は◯◯◯◯の腐敗と欺瞞をつく映画」として
まあなんというか「反ナチとみせかけて実際は反ソ連」を主張してた
アンジェイ・ワイダさんの映画をみるような感じで見てた、ということらしい。

おまけに主演の高倉健さんは無口キャラだったため
おしゃべりクソ野郎雄弁な指導者がよいとされてた◯◯時代へのアンチテーゼとなったわけである。
尤も健さん、素はしゃべり好きみたいですが・・・

で、ここからが本題。

この映画の最大の見所、というか最もトンデモない展開は
警察のパトカーで周辺地帯を包囲された健さんが

馬に乗った中野良子さんに助けられて包囲網を突破するシーンである。
save.jpg
というよりここ以外は通して見なくてもいいと思う。


この馬のシーンもケッタイで、完全にパトカーや乗用車が馬を目の前にして

toppa.jpg

through.jpg

“不能”になってるというのがなんとも味わい深いのだが


僕は、この映画が中国でウケた最大の理由は「馬VS乗用車」のシーンがあったからだと
みている。


いきなり話は飛ぶが、我々日本人は「日本刀とそれにべったり貼り付いた武士道」という問題を抱えていた。
戦後表面上「日本刀はナシね。刀ダメね。警察は拳銃持ちましょうね。」となっても
精神的には非常に葛藤した。

其の葛藤が「日本刀VS拳銃」を取り扱った数々の娯楽映画、ドラマを産んだ。









恐らく中国人も、我々日本人が「日本刀と拳銃」の問題で精神的に葛藤したように
「馬と乗用車」の問題で
・・・・こんなことを言ってはなんだが「騎馬精神」みたいなもので精神的に葛藤したのではないだろうか。

だから、あの「馬VS乗用車」を描いた「君よ憤怒の河を渉れ」がバカ受けしたのではないかと思う。

kensan.jpg



証拠と言ってはなんだが「追捕世代」の張芸謀さんが高倉健さんを主演にして撮った映画のタイトルは
「単騎、千里を走る。」


やはり「馬」が主題となっている。


「君よ憤怒の河を渉れ」と当時の中国は、偶々“ウマが合った”んですなあ
とまあ、しょーもないダジャレ落ち、ということでお開き。


※追記
「健さん」は降旗康男さんとネスカフェCMパワーで「大御所」の立場に“殿堂入り”してしまったが
高倉健さんが、本質的にはどういうスターであったかは
◯◯◯世代に「唐獅子牡丹」がウケたことと
本稿で書いたとおり、AFTER◯◯世代に「君よ憤怒の河を渉れ」がウケたことを
考え合わせてみれば、割にあっさりと答えが導きだせてしまうと思う。
しかし、それは後世の方にお任せしたい。
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